傷病手当金がもらえない原因6つと対処法|審査に落ちる典型パターンを徹底解説

傷病手当金を申請したのに「もらえない」「不支給になった」「審査に時間がかかって不安」という声はとても多いです。とくにメンタル不調やうつ病の休職では、主治医の診断書の書き方・会社の担当者の理解度・勤務実態の証明など、つまずきやすいポイントが複数あります。

しかし、実際に不支給になるケースはある程度パターン化されており、原因を知って正しく対処すれば支給される可能性は大きく高まります。

この記事では、よくある「もらえない6つの原因」を専門的なところまでやさしく解説しつつ、あなたが今すべき対応をわかりやすくまとめました。この記事を読めば、「自分のケースは大丈夫?」「どの部分を修正すべき?」が理解でき、スムーズに受給へ近づけます。

傷病手当金とは?条件・計算方法・申請手順をわかりやすく解説|受給中の注意点も完全まとめ

Table of Contents

傷病手当金がもらえない原因はこの6つ

傷病手当金が不支給になるケースには、いくつかの「典型的なパターン」があります。
逆に言えば、この6つを押さえておけば、受給できる可能性を大幅に上げられるということです。

1つずつ、専門用語を使わずに分かりやすく解説します。

1. 医師の意見(労務不能)が書かれていない

傷病手当金で最も重要なのが、
主治医が「働けない状態」と判断しているかどうか です。

申請書の医師記入欄に、

  • 労務不能にチェックがついていない
  • 「就業可能」や「軽作業なら可」などと書かれている
  • 生活状況が日常生活に支障なしと記載されている

このような場合、審査で「働ける状態」と判断され、不支給になることがあります。

なぜ医師の記載がもっとも重要なのか?

審査側は、医師の診断書と申請書の内容を最重視します。
とくにメンタル不調の場合、外から見えにくい障害なので、医師の判断がほぼ唯一の証拠 になります。


2. 休職前に有給消化をしていない/不整合がある

意外と多いのがこのパターン。

傷病手当金は「給与が出ていない期間」が対象です。
しかし、休職開始前に有給休暇をしっかり消化していなかったり、
有給を使った日と申請内容が矛盾していると、審査で引っかかります。

例:

  • 有給扱いの日を「働けない」と申請してしまう
  • 給与明細と申請内容が一致しない
  • 会社の担当者が休職日を誤って記入

これらはすべて不支給の原因に直結します。


3. 勤務実態と申請内容に矛盾がある

よくある矛盾がこちら:

  • 「働けない」と申請しているのに出勤記録が残っている
  • タイムカードに数分~数時間勤務が記録されている
  • 業務連絡のやりとりをしていた履歴がある
  • リモートワークの記録が残っている

傷病手当金の考え方はとてもシンプルで、

1分でも働いたら、その日は“労務不能”とは言えない

というルールがあります。

出勤扱いになっていなくても、
“業務に該当”すると判断される動きがあると不支給リスクが高まります。


4. 申請書の記入ミス・抜け漏れ

これが本当に多いです。

  • 日付がずれている
  • 記入欄が空欄のまま
  • 医師欄と事業主欄の記載タイミングが合っていない
  • 診断書の内容と食い違っている
  • 書類の提出時期が遅れている

とくに「日付の不一致」は審査が止まる大きな原因。
同じ期間を指しているのに書類ごとに日付が違うと、審査は止まり、
最悪の場合「不支給」になります。


5. そもそも加入期間・条件を満たしていない

傷病手当金には、いくつかの受給条件があります。

  • 健康保険に継続して加入しているか
  • 退職前に1日でも出勤しているか
  • 退職後の申請なら「在職中からの継続療養」であるか
  • アルバイトや兼業で別の保険に加入していないか

ここが抜けていると、書類がどれだけ完璧でも受給できません。

退職前後のタイミングは特に要注意です。


6. 会社担当者や医師の理解不足による遅延・不備

本人が丁寧に準備していても、

  • 会社担当者が制度を理解していない
  • 責任者のサインが遅れる
  • 医師が労務不能の考え方を理解していない
  • 医療機関の事務処理が遅い

このような理由で「提出期限に遅れる」ケースが多発します。

遅れ自体は絶対アウトではありませんが、
遅延が長いと審査に不利になることがある ため注意が必要です。

傷病手当金の申請が遅れたらどうなる?【振込遅延・不支給のリスク】

審査で重視される3つのポイント

傷病手当金の審査で最も重要なのは、
「本当に働けない状態であること」 を、
書類を通じて一貫した形で証明できているかどうかです。

そのために審査側がチェックするポイントは、実は 3つ に集約されます。


1. 「労務不能」の証明が最重要

傷病手当金で一番大きな判断材料は、
医師の書く “労務不能”の記載 です。

審査基準は「今の仕事ができるかどうか」

ここが誤解されやすいポイントなのですが、
傷病手当金の審査は 「一般的に働けるかどうか」ではなく、あなたの職務内容で働けるかどうか を基準にします。

例:

  • うつ病で集中力が落ち、通常の業務が困難
  • パニックで電車通勤ができない
  • 高ストレス職で症状が悪化する

これらは「一般的には働けても、自分の業務はこなせない」状態なので、労務不能に該当します。

医師が軽く書くと、不支給になりやすい

よくあるケース:

  • 「軽作業なら可」と書かれる
  • 「就業制限あり」とあいまいに書かれる
  • 日常生活の欄に「支障なし」と書かれる

これらは審査で「働ける」と判断されやすく、非常に危険です。


2. 勤務状況と診断書の整合性

審査でよく指摘されるのが、
勤務実績と診断書の内容が合っているかどうか です。

矛盾の例

  • 診断書で「労務不能」と書かれているが、その期間に出勤記録がある
  • 休職開始日と会社記入欄の日付が一致していない
  • 有給を使った日と申請期間にズレがある
  • 電話・メール対応などが“業務”と判断されるケース

審査は「1分でも働いたらその日は対象外」という厳密な考え方をとるので、
ほんの小さな矛盾でもアウトになります。


3. 休職開始時の手続きの正確さ

傷病手当金は、最初の申請の正確さが非常に重要です。
とくに以下のポイントは審査で必ず確認されます。

  • 休職開始日が明確に定義されているか
  • 有給消化→欠勤→休職の流れがきちんと整理されているか
  • 就労不能になった「初日」が正しく書かれているか
  • 会社欄・医師欄・本人欄の記載内容が一致しているか

最初の申請書にミスがあると、その後も影響し続ける

1回目の申請書で矛盾があると、

  • 審査が遅れる
  • 追加書類を求められる
  • 不支給リスクが上がる

という負の連鎖が起きやすくなります。

だからこそ、
最初の書類をいかに正しく書くかが、受給成功のカギ です。

原因別の対処法まとめ

傷病手当金は、不支給になりやすいポイントが分かれば、
事前に対策をして正しく受給につなげることができます。

ここでは、先ほど挙げた6つの原因に対応する
もっとも効果的な対処法をまとめました。


医師に正しく症状を伝える方法

(労務不能の証明につながる最重要ステップ)

医師の記載内容は審査に直結します。
そのため、受診時には「困っている事実」を具体的に伝える必要があります。

伝えるべきポイント

  • 出勤(通勤)が困難な理由
  • どんな業務ができなくなっているか
  • どれくらいの時間、症状が続いているか
  • 生活での支障(料理・清掃・買い物・睡眠など)
  • 職場のストレス要因で症状が悪化すること

伝え方のコツ

  • 「なんとなくつらい」では伝わらない
  • 数字・頻度で説明する(例:週3回泣いてしまう・集中が5分続かない)
  • 症状が軽く見える言い方は避ける
  • 医師に誤解されやすい“頑張りすぎの発言”は控える

メモを渡すのも有効

特にメンタル不調の場合、
当日にうまく話せないことが多いので、
事前に症状メモを作って渡すと正確に伝わる。


会社の担当者に確認すべきこと

(勤務状況と書類の整合性を保つ)

会社記入欄のミスや認識のズレは、不支給原因のトップクラス。

確認すべき項目

  • 休職開始日が正しいか
  • 有給消化の扱いが合っているか
  • 欠勤・休職の処理が正しいか(システム上の処理も含む)
  • 給与支給状況が申請書と一致しているか
  • 業務連絡をやりとりしないよう配慮されているか

よくあるズレの例

  • 人事と上司の認識が違う
  • 人事が制度理解不足
  • 有給を勝手に使われている
  • タイムカードが修正されていない

申請書は“紙”であっても、
審査側は 勤務実績(勤怠データ) を重視します。

不安な場合は、必ず担当者に「控えコピー」をもらってください。


書類不備を防ぐチェックリスト

(最も多い不支給の原因を自力で潰す)

提出前に、必ず以下を確認しましょう。

書類のチェック項目

  • 日付がすべて一致しているか
  • 空欄がないか
  • 医師欄と会社欄の記載タイミングがズレていないか
  • 診断書と申請書の内容に矛盾がないか
  • 休職期間・有給使用日・給与支給日が整合しているか
  • 提出期限に間に合っているか
  • コピーを必ず3部とっておく

特にズレやすい項目

  • 休職開始日・復職予定日
  • 有給休暇の消化日
  • 医師が記載する期間と会社が記載する期間の差
  • 本人記入欄の不備(空欄・誤字)

書類の矛盾は審査で最も嫌われる要素です。
提出前に必ず 会社・医師・本人の3者の内容が完全一致しているか を確認しましょう。


傷病手当金の申請フローと注意点

傷病手当金の申請は、一見複雑に見えますが、流れを理解すればスムーズに進められます。
特に 「初回申請」 と 「2回目以降の継続申請」 では注意すべきポイントが異なるため、ここでしっかり整理しておきましょう。

【体験談あり】傷病手当はいつ振り込まれる?支給までの日数と注意点

初回申請の流れ

傷病手当金の最初の申請は、もっとも重要なプロセスです。ここで不備があると、その後の申請すべてに影響し、不支給・遅延の原因になります。

初回の基本的な流れ

  1. 医師の診断書(傷病名・労務不能の意見)をもらう
  2. 会社へ休職の意向を伝え、休職開始日の確定
  3. 申請書(健康保険傷病手当金支給申請書)を自身で記入
  4. 事業主記入欄を会社に依頼
  5. 医師記入欄の記載を依頼する
  6. 書類一式をチェックし、すべての期間と日付が一致しているか確認
  7. 協会けんぽ・健康保険組合へ提出(郵送 or 会社経由)

初回申請の注意点

  • 休職開始日が最重要
    医師が「働けない」と判断した日と、会社が休職にした日が一致しているかを必ず確認。
  • 有給を消化した場合は日数を明確に
    給与が出た日=傷病手当金の対象外。
  • 休職初日の証明が曖昧だと審査が止まる
    会社の規定・勤怠システムも照合されることがあります。
  • 書類控えは必ず保存する(3部程度)
    会社や医師に提出するときに紛失が発生することもあるため。

2回目以降の継続申請の注意点

初回申請が通ったあとは、
1〜2ヶ月ごとに「継続申請」 を行います。

継続申請は初回ほど複雑ではありませんが、以下の点に注意が必要です。

継続申請のポイント

  • 労務不能期間が途切れていないか
    1日でも「働ける」と判断される日があると、その期間の支給は停止されます。
  • 医師の診断が前回と矛盾していないか
    “急に軽く書かれる”と審査が再度厳しくなるので、診察時の伝え方が重要。
  • 主治医が変わると説明が必要になる場合がある
    その場合、症状の継続性を明確に伝えること。
  • 会社の記入欄は毎回チェックする
    “給与支給状況”として少額の支給があった場合、その理由を明確にする必要があります。

不支給だった場合の「再申請」や「審査請求」について

もし不支給通知が届いた場合でも、終わりではありません。
状況によっては 再申請・審査請求 が可能です。

再申請ができるケース

  • 書類の不備・矛盾があった
  • 医師欄の記載が不十分だった
  • 会社の記入漏れがあった
    → 不備を修正して再提出することで、支給されることがあります。

審査請求をするケース

  • 労務不能と判断されなかった
  • 症状が軽く見られた
  • 医師の診断が十分に評価されなかった
    → 国に対して「審査が不適切だったのでは?」と申し立てる制度です。

審査請求は時間がかかりますが、
メンタル不調のケースでは覆ることも珍しくありません。

審査請求を行う場合は、社労士や専門家への相談が有効です。

よくある質問(Q&A)

傷病手当金の申請・受給では、多くの人が同じような疑問や不安を感じます。
ここでは特に質問の多い3つを取り上げ、分かりやすく解説します。


復職後にさかのぼって支給されることはある?

あります。

傷病手当金は
「働けなかった期間」=「給与が出なかった期間」 に対して支給される制度です。

そのため、

  • 休職中に書類を提出できなかった
  • 手続きが遅れてしまった
  • 会社側の処理が滞っていた

といった理由で提出が遅れても、
条件さえ満たしていれば 後から支給されます

ただし注意点として…

注意

さかのぼりは「時効の2年以内」

原則、
支給対象となる日の翌日から2年が時効 です。

例:
2023年1月1日分 → 時効は2025年1月1日

つまり、早めの申請が安心です。


アルバイトや副業をしていた場合はどうなる?

結論:

働いた日は支給対象外になる可能性が高い です。

傷病手当金は、
「業務に従事していない」ことが条件。

たとえ軽作業でも、
“労務にあたる行為をした” と判断されれば、その日の支給は受けられません。

ただし、以下は認められるケースがある

  • 症状に影響しない軽度の作業
  • 社会復帰リハビリとして一時的に行った労働
  • 医師が「これなら問題ない」と意見を出している場合

判断はケースバイケースなので、
心配なときは 必ず健康保険組合に確認 しましょう。


うつ病・メンタル不調の場合は通りやすい?

誤解されていますが…

「メンタル不調だから通りやすい」わけではありません。

しかし、
記載内容が正しければ十分支給される疾患 です。

審査で見られるのは以下の点:

  • 症状が業務に支障をきたしているか
  • 通院・治療が継続されているか
  • 医師が明確に「労務不能」と判断しているか
  • 日常生活能力がどれほど低下しているか

つまり、
“適切に伝えること” と “書類の矛盾をなくすこと” が最重要になります。

メンタル不調は外から見えないぶん、
申請者側の工夫が成功を左右します。

【体験談】うつ病で休職した私が、傷病手当金をもらうまでの流れと注意点まとめ

まとめ:傷病手当金は「正しい申請」で成功率が大きく変わる

傷病手当金は、制度自体はとてもシンプルですが、
書類の矛盾や手続きのミスがあると不支給になりやすい制度でもあります。

しかし逆にいえば、

  • 医師に正しく症状を伝える
  • 会社と休職日・有給の扱いを正確に合わせる
  • 書類の整合性を徹底してチェックする

この3つを押さえるだけで、
受給できる可能性は大きく高まります。


傷病手当金は、“あなたが安心して休むための制度”

傷病手当金は、働けないあなたを責める制度ではなく、
安心して休み、回復するためにあるサポート です。

メンタル不調・うつ病の場合は特に、

  • 集中できない
  • 頭が回らない
  • 事務作業がつらい
  • 会社とのやり取りがストレスになる

こうした負担の中で申請を進めるのは本当に大変です。

それでも、
あなたは今、制度に頼るだけの「権利」があります。


不安があっても大丈夫。改善できるポイントは必ずある

もし今、

  • 不支給の通知が来た
  • 書類が返ってきた
  • どう直せばいいかわからない

そう感じていても、
多くの場合、原因を整理すれば改善できます。

書類の不備なら修正すればいい。
医師記載が不十分なら、改めて症状を伝えればいい。
会社側と認識がズレているなら、一度すり合わせればいい。

あなたの状況は「手遅れ」ではありません。


今できる最初の一歩

最後に、今日からできる行動をまとめます。

  • 休職日・有給消化日などをメモで整理する
  • 医師に伝えるべき症状を箇条書きにする
  • 会社からもらった書類の控えを確認する
  • 申請書の「日付・期間」が一致しているか確認する

たったこれだけで、
傷病手当金の申請は驚くほどスムーズに進みます。


あなたは、安心して休む価値のある人

働き続けることが難しいと感じる自分を責めなくていい。
休むことは「逃げ」ではなく、
人生を立て直すための大切な選択 です。

傷病手当金は、あなたがまた前を向けるように
国が用意してくれた支援制度。

この記事がその一歩を支えるガイドになれば嬉しいです。

仕事のストレスが限界だと感じたら読む記事|メンタル不調の原因〜休職の判断まで完全ガイド

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA