障害について調べはじめると必ず出てくる
「障害年金」と「障害者手帳」。
名前が似ているため混同されやすいのですが、
目的も審査基準も、もらえる支援もまったく別物 です。
この記事では、両者の違いをわかりやすく比較しながら、
どちらを先に取るべきかの結論 までしっかり解説します。
障害年金と障害者手帳はどう違う?結論まとめ
障害年金=「お金(収入)の支援」
- 生活に困難がある人に、国が“お金”を支給する制度
- 審査では「日常生活能力」「労働能力」を重視
- 初診日が重要
- 一定の保険料納付要件が必要
障害者手帳=「生活の支援・割引制度」
- 交通機関の割引、税金の控除、就労支援などを受けられる
- 症状の“重さ”で等級判定
- 保険料の納付要件は不要
- 年金とは審査基準がまったく違う
よくある誤解
- 「手帳があると年金が通りやすい」は誤解
- 「年金3級なら手帳3級」は誤解
- どちらも別々の法律・基準で判定される
一言で言えば、
障害年金は「お金」・障害者手帳は「サービス」 を受けるための制度です。
障害年金の基礎知識(要点だけ)
障害年金の目的
病気や障害で働けない・生活が不自由になった人に、
毎月の生活費としてお金が支給される 国の制度です。
等級の種類
- 1級:ほぼ日常生活全般に介助が必要
- 2級:日常生活が著しく制限される
- 3級:働くことに大きな制限がある(厚生年金のみ)
申請条件
- 初診日が年金加入中であること
- 保険料を一定期間払っていること
- 障害状態が基準に該当すること
年金が決まるポイント
- 家事ができるか
- 外出できるか
- 他者とのコミュニケーション
- 労働能力(働ける時間・配慮の必要性)
- 身体・精神の具体的な制限
※病名だけではなく、生活への影響の大きさ が判断材料。
障害者手帳の基礎知識
障害者手帳の目的
日常生活を“生きやすくするための支援”を受ける制度。
等級
- 精神障害者保健福祉手帳(1〜3級)
- 身体障害者手帳(1〜7級)
- 療育手帳(自治体により基準が異なる)
主なメリット(例)
- 電車・バスの割引
- 携帯電話料金の割引
- 税金・医療費の控除
- NHK受信料減免
- 就労支援サービスの利用
- 公共施設の割引 など
年金との違い
審査では 症状の重さ(診断書) を重視。
生活能力よりも「医学的状態」に寄った判定方法です。
審査基準の違いをわかりやすく比較
| 項目 | 障害年金 | 障害者手帳 |
|---|---|---|
| メイン目的 | 生活費(収入)の補填 | 生活支援・割引 |
| 審査基準 | 生活能力・労働能力 | 症状の重さ(診断書) |
| 初診日 | 超重要 | 関係なし |
| 保険料納付要件 | 必要 | 不要 |
| 結果の違い | 金銭の支給 | 手帳・サービス利用 |
「年金は通るのに手帳は取れない」のはなぜ?
→ 生活は成り立たないが、医学的には“症状が軽い”と判断される場合。
「手帳は取れるのに年金は不支給」のはなぜ?
→ 症状は重くても、働けている・家事ができるなどで
生活能力が高いと判断されるため。
どちらを先に取るべき?最適な順番はこれ
結論:
人によって最適な順番が違う。
〈手帳を先に取るべきケース〉
- すぐに交通費・税金などの支援を受けたい
- 就労移行支援などサービス利用を急いでいる
- 医師が手帳の診断書に協力的
- 年金はまだ働けるかどうか微妙
→ 生活補助を早く受けたい人は手帳優先が便利。
〈障害年金を先に申請すべきケース〉
- 休職・離職して収入が不安
- 初診日から1年6ヶ月が過ぎている
- 症状で日常生活が成り立っていない
- 家事・外出・仕事が難しい
- 精神的な負担が大きい
→ 年金のほうが審査期間が長いため、早めに動くべき。
同時進行は可能?
可能。ただし以下に注意:
- 診断書の書き分けが必要
- 医師に「どちらの診断書か」を明確に伝える
- 生活能力と症状の“見せ方”が異なる
同時に進めると主治医の負担が増えるので、
事前に相談して決めるのがベストです。
タイプ別の取得パターン
精神疾患(うつ・双極・発達障害など)
- 手帳のほうが通りやすい傾向
- 年金は「生活能力の低下」が必須
- 働きながら手帳だけ先に取る人も多い
身体障害(肢体・内部疾患)
- 年金と手帳の等級が比較的そろいやすい
- 医学的な判定基準が明確
休職中・収入が不安な人
→ 年金優先が鉄則。
すでに手帳を持っているが年金を申請していない人
→ 手帳があっても年金は別審査。
年金に必要な生活状況のメモが重要。
よくある質問(Q&A)
Q. 手帳があると年金は通りやすくなる?
A. ならない。
制度が違うため、手帳の等級は年金の審査に反映されない。
Q. 年金3級なら手帳3級になる?
A. ならない。
判定方法がまったく違うため、結果が一致しないことは普通。
Q. 手帳を持っていることを会社に知られる?
A. 基本的に知られない。
自分が言わない限り、職場に通知は行かない。
Q. 更新はどう違う?
- 年金 → 1〜5年ごとの更新
- 手帳 → 2年ごとの更新(精神)、身体は固定の場合も
Q. どちらかを持っていると、もう片方に不利?
A. どちらも影響しない。
まとめ:目的が違うから両方を正しく使い分けることが大切
- お金の支援が必要 → 障害年金
- 生活の割引・サービス → 障害者手帳
どちらかではなく、
必要なら両方を使って生活を安定させるのが正解です。
判断に迷う場合は、
- 年金事務所
- 市役所の障害福祉課
- 経験豊富な社労士
に相談することで最適な選択ができます。

